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【心理学】SNSで承認欲求はなぜ起こる?
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心理
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SNS等における承認欲求について、色々な角度から学べる。
X(旧twitter)、Instagram、Threadsなど、様々なSNSがその利用拡大に伴い、私たちの日常に広く浸透しています。
そんな中、普段よく耳にする言葉として「承認欲求」が一般的な言葉になりました。
そしてその多くが、承認欲求をこじらせた「承認欲求おばけ」に代表されるような、ネガティブな意味合いで語られます。
本来誰しもが持っている「承認欲求」、実際にはどういったものなのでしょうか?
心理学の観点から承認欲求について考察してみます。
承認欲求と自己顕示欲の違い
承認欲求と似たニュアンスで使われる言葉に、自己顕示欲があります。
承認欲求には、他者から価値のある存在として認められたいという意味と、他者ではなく自分で自分を価値のある存在として認めたいという意味の両方を含みます。
一方自己顕示欲は、他者から注目を集めたい、良くも悪くも自分の存在を知らしめたいという欲求を意味します。
多くの部分で意味が共通する言葉ですが、自己顕示欲の方がネガティブな事象を含むように思います。
また、ここで想定される「他者」の範囲がどこまでを指すのかも考える必要があります。
特定のグループ内なのか、不特定多数なのかによっても、意味合いが変わってきますね。
マズローの自己実現理論における承認欲求
承認欲求が語られる上で避けて通れないのがマズローの自己実現理論です。
欲求5段階説として有名なので、こちらを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
生理的欲求 > 安全 > 愛情・所属 > 承認 > 自己実現
の順に私たちの欲求は階層になっており、下層が満たされて初めて一つ上の層にいけると仮定したものです。
この中の4つめの階層に今回のテーマの承認欲求が表れます。
ここでの承認欲求とは、自分が集団から価値ある存在と認められ、尊重されることを求める欲求とされています。
しかし、現在の心理学界隈ではその科学的根拠の乏しさからマズローの着想は信頼されておらず時代遅れであり、また5段階欲求という図式は、西洋的な価値判断・イデオロギーに偏っていて、他の文化社会に適用できないと非難されています。
進化心理学における承認欲求
進化心理学とは、心理学に進化生物学の考え方を取り入れたもので、人間が持つ心理は、ホモサピエンスが進化の過程で適応・獲得した(生きるために都合が良かったため、自然淘汰の末に残った)ものであると定義する心理学です。
例えば、現代の豊かな時代の私たちが、体に悪いと分かっていても甘いものや脂っこいものに食欲がそそられてしまうのは、糖や動物性脂肪が好きな個体の方が生き残りやすく、結果的に子孫を残しやすかったからだという考え方です。
進化心理学者のケンリックは著書「野蛮な進化心理学」の中で、「ケンリックの欲求ピラミッド」を提唱しています。
これは、マズローの欲求5段階説に対して生物学的なアプローチが欠如していることを指摘しています。
ケンリックの欲求ピラミッドでは、私たちの欲求を下から
生理的欲求 > 自己防衛 > 所属 > 地位・承認 > 配偶者の獲得 > 配偶者の維持 > 子育て
の8段階とし、高次の欲求を実現するために低次の欲求が必要であると考えます。
ここでの承認欲求とは、マズローの承認欲求のように尊重されて満足するよりももっと突っ込んだものです。
ホモサピエンスには集団内で和を乱す異端分子や役に立たない個体を殺害する習性があった可能性が研究により指摘されています。
なので、ホモサピエンスは集団内で自らが価値のある存在であることをアピールすることで、殺害されるのを回避していたとされています。
また、集団内で他者より優位な立場を手にすることができれば、優位に自らの子孫を残すことができます。
私たちの遠いご先祖様のホモサピエンスは、集団内の他者からの承認を得ることで集団の中での地位や価値を高め、それによって集団の中での生存率が上げ、延いては子孫を残せる可能性を上げていました。
私たちの脳や心理はこのときから変わっておらず、現代の私たちの承認欲求もこの原理から発生しているとされています。
そう考えると、SNSにおける承認欲求は私たちが考えるよりももっと生存本能に近いプリミティブなものなのかもしれませんね。
SNSに映える写真を上げることも、脳は生き残るための行動として認識しているのかもしれません。
もっと俗っぽくいうと、モテたいからということもできますが(笑)
今回はよく耳にする承認欲求について考察してみました。
上記2つの学説は、どちらも仮説であり、100%正しいと証明されたものではありません。
例えば進化心理学では「自分が生きた証を残したい」というような自らの死後の承認欲求についてはまだ説明できません。
アドラー心理学を提唱したアドラーは、他者からの承認への期待を手放すように提案しています。
しかし承認欲求が本能に近い欲求である以上、全て手放すことは難しいかもしれません。
だとすれば、不特定多数から承認を得られなくても、身近で自分を認めてくれる人を大切にできれば、ホモサピエンスのご先祖様にも納得していただけるのではないでしょうか。
参考文献
アブラハム・マズロー『自己実現理論』
http://ja.wikipedia.org/w/index.php?curid=165346
ダグラス・ケンリック
『野蛮な進化心理学』
関 一真
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心理
担当
京都四条烏山校
所属
NLP™トレーナー、心理カウンセラー2015年より京都校、大阪梅田校にて心理学系講座を担当。優秀講師賞受賞。個人で心理カウンセラー、占い師としてクライエント様に相談援助を行う。日本語教師資格保有(日本語教育能力検定試験合格)
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